書道用品・篆刻用品の製造・輸出入、雄勝玄昌石硯・工芸品・建材の製造元

筆について

上海工芸筆 火炬牌
蘇州湖筆 金鼎牌
善璉湖筆 双羊牌

秦の始皇帝の将軍で斉国を討ち滅ぼし、万里の長城の建築にも活躍した蒙恬が獣の毛を集めて作り、始皇帝に献上したのが筆の始まりとされていましたが、1954年に戦国時代の楚の遺跡から長沙筆が発見されこの説は覆されました。現在では甲骨文字の中に筆を表す文字が発見されていて、筆の発明は殷代まで遡るのではないかとも考えられています。
蒙恬は筆の発明者ではなく、筆の改良者という説が一般的になりました。秦の始皇帝が国を統一する以前は、筆の呼び方がバラバラで呉国(現江蘇)では“不律”、楚国(現湖北)では“聿”、燕国は“弗”などと呼ばれていましたが秦統一以降は書同文政策によって一律に毛筆と呼ばれるようになったそうです。
唐代から宋代にかけては現安徽省宣城で作られた宣筆が毛筆の主流でしたが、戦火を逃れる職人の移動によりその後産地は湖州へ移り湖筆が盛隆するようになりました。
明の首都が南京から北京に遷されると同時に、湖筆名店も北京をはじめ各地に開店するようになり、有名なところとしては北京の戴月軒・賀蓮青・李玉田、上海の楊振華・李鼎和・周虎臣(一説には宣筆出身)・茅春堂、蘇州の陸益元堂・貝松泉・楊二林堂、揚州の興散寺、天津の虞永和などがあります。
このほかにも各地で制筆が独自に発展し中国全土にてそれぞれ特徴のある筆がつくられましたが、文化大革命の時代に統合が進み、例えば上海では李鼎和、周虎臣、楊振華他5社が上海筆店となり、北京では戴月軒、賀蓮青が北京湖筆店、湖州では王一品、胡仕文、三益、費蓮青が湖州筆店となりました。
現在では江西省文港、太湖周辺一帯が毛筆の大きな産地になっていますが、それ以外の場所でもマニアックな筆が数多く製造されています。
日本に筆が舶来し始めたのは漢字が伝わってきた時代の渡来人によるものとされていて、その後遣隋使や遣唐使が製法を持ち帰ったようで、空海が製法の祖とされている一説もあるようです。正倉院に当時の雀頭筆といわれる小楷用の短鋒紙巻筆が収蔵されていて、おそらく唐代に宣州あたりで作られた筆が舶来してきたのではないかなどと想像してしまいます。
その後平安時代になると紙巻筆は独自に進化を遂げ長鋒になっていったもようで、かな書きなどに適応していったのだと思います。江戸時代元禄期になると細井広沢によって無芯筆の練り混ぜ法による製筆法が広められていき、明治時代になると練り混ぜ法が主流になったということです。江戸時代には筆の職人を擁する藩が多数あり、いまでも各地にその名残が見られます。明治から昭和にかけて経済成長するにつれて各都市部の筆匠は廃業したり書道用具店になって発展していき、現在では広島、奈良、愛知が主な産地として残っています。
ここでは弊社が輸入し在庫している中国ブランドの筆をはじめ、企画製造している無印筆、店主セレクトの日本国内メーカー様のマニアックな筆をピックアップして紹介します。

上海工芸筆 火炬牌

1970~1980年代、中国政府は日本や東南アジアへ向けて工芸品を輸出することに資源を集中し経済を発展させる政策をとっていました。文房四宝もその一つでした。国営の上海市工芸品進出口公司が羊毛筆の基準を統一し、その製造に湖州、蘇州、揚州、南京の数件の制筆廠が手分けしてあたり、最後に輸出商標の火炬ブランドを貼って輸出していたということです。現在は元国営善璉含山湖筆廠から私営に変わった双喜湖筆有限公司が火炬ブランドを継承して生産しています。上海工芸の筆はてっきり上海で作られていると思われがちですが、実は今も昔も上海では作っていないようです。昔から各地で製造されているので、筆の仕様を熟知している80歳くらいの古い職人さんが各地にまだご健在で、あちこちで勝手に当ブランドの筆が作られ、勝手に印刷された火炬商標を貼られた筆が今でも日本に舶来しています。偽物といえば偽物で、本物といえば本物ですが、一応今は商標権者の双喜湖筆から出荷される筆が法律上の本物ということになっています。

蘇州湖筆 金鼎牌

1950年代に善蓮出身の筆工たちによって創建され、1980年代には上海の上海工芸や南京の江蘇工芸等の輸出ブランドの生産指定工場でした。最盛期で500名ほどの工員がいたということです。1990年代の国営企業解体に伴い何社もの私営蘇州湖筆廠に独立し、金鼎牌、桃源牌、金亭牌、金閶牌等のブランドで日本へ舶来しています。

善璉湖筆 双羊牌

1956年に国営善璉湖筆廠として設立された当時全国で最大の工場です。1999年に善璉双羊湖筆有限公司として私営の企業になっています。

武林 邵芝巌

武林は臨安、銭塘とならんで杭州の旧呼称で、邵芝巌は清代の同治元年(1862年)に開店した文房四宝を扱う筆庄です。

山東筆 泰山牌

かつて天津港から長城牌として輸出された北方筆は河北衡水候店筆廠(国内向けは古鋒牌)、河北唐山楽亭県制筆廠(国内向けは金雀牌)、掖県(莱州)筆刷廠の3工場で製造されていました。良質な狼毫は候店と楽亭で作られ、掖県(莱州)筆刷廠では学童向けの馬毛を使った狼毫代替筆の製造が主でした。同じ“秋雁”という筆でも候店と楽亭は狼毫製のもので掖県制刷廠のは馬毛製だったそうです。山東筆の産地掖県の中で最も良質な狼毫筆を作ったといわれるのが青島泰山牌を輸出ブランドにしている掖県制筆廠で、1970年代に鄧小平氏が来日した際に当工場の泰岱翠峰という筆をお土産にしたそうです。当時の掖県制刷廠と掖県制筆廠は別の工場です。

宣筆

秦始皇帝時代の蒙恬将軍が紀元前223年に南方の楚を征伐に出かけた際に、現宣城にてよく肥えて毛が長い野兎を見つけ筆を作ったのが始まりで秦から唐代宋代までは宣紙でも有名な宣城が毛筆生産の中心になり、宣筆と呼ばれるようになりました。安徽の宣州の野兎の紫毫は古代から高級品で、長年野生の竹の葉を専ら食し、山の泉を飲んで育つ雄の兔の秋の毛で、その中でも首根っこからほんの少しだけとれる“双箭毛”が天下一品とされています。唐代から筆匠として最も有名なのが諸葛氏一族で、王義之や柳公権も愛用したようです。
元代以降になると、時の統治者が製筆を軽視したことや度重なる戦火が原因で筆匠たちは江南の太湖一帯へ避難していくようになり湖筆盛隆の時代になっていきます。つい一昔前までは宣筆というといかにも中華お土産的な様相を呈していましたが、最近の若い作り手の作品は伝統と美を兼ね備えた目を見張るつくりのものがあります。

パフォーマンス用
天尾馬毛×ナイロン毛兼毫筆

お手入れ、メンテナンスの負担とコストを軽減するためにナイロン毛を混ぜました。夏場などは使用後にしっかり乾燥させないと根腐れし抜け毛の原因になりますが、ナイロンを混ぜることにより腐食しにくくなっていてお手入れが楽になっています。
筆管はネジ式で取り外しが可能で別売りの60cmか90cmのものに交換が可能です。筆管中心部に鉄の芯が貫通しているのでパフォーマンス中に破折しない丈夫なつくりになっています。筆管の素材には竹とカーボンの二種類を用意していますが、竹製の場合は乾湿の差が激しい所では亀裂が入りやすくなっています、予めご了承の上ご利用願います。
欠点はナイロン毛と筆管内の鉄芯の重量で振り回しに少々パワーが必要になりますので筋トレ必要です。作るたびに若干サイズが変わりますので表記サイズは参考程度にお考え下さい。ご注文をいただいてから当社にて穂首の根元を焼いて絞める作業を行い筆管に接着します。

パフォーマンス用
天尾馬毛100%筆

筆管はネジ式で取り外しが可能で別売りの60cmか90cmのものに交換が可能です。筆管中心部に鉄の芯が貫通しているのでパフォーマンス中に破折しない丈夫なつくりになっています。筆管の素材には竹とカーボンの二種類を用意していますが、竹製の場合は乾湿の差が激しい所では亀裂が入りやすくなっています、予めご了承の上ご利用願います。
欠点は馬毛100%なので使用後しっかり乾燥させないと根腐れを起こしてしまいます。

北米馬毛100%筆

アメリカ産の馬毛を中国に持ち込み穂首を作りました。白毛と茶毛の二種類あり、中国産天尾に比べてやわらかい毛が特徴です。筆管は木製です。

羊毛筆

毛先が飴色の鋒がある良質な腰のある羊毛を選別しました。先梳きは穂先を若干交互にずらすことにより尖がった形の穂首を形成することによる表現ができます。完全先揃えは毛先を完全に一直線に並べた作りで、カスレやはらい、はねに独特な効果が得られます。ちょい梳きは上記二者のちょうど中間の仕様になります。羊毛の最も細い毛を、日本では細微光鋒といいますが、中国では細嫰さいどん光鋒といいます。穂首はご注文いただいてから日本で焼きしめて接着するので事前にご要望あれば5mmくらいは穂丈を調整できます。

イタチ
コリンスキー筆

中国ではイタチ毛を狼毫と呼びます。中でもシベリアから北東中国に分布するコリンスキーの尻尾の毛は北狼毫とよばれ弾力とまとまり、水含みが優良で書画筆をはじめ化粧筆としても高級品になっています。近年ではワシントン条約で輸出入が禁止され、かつ中国国内でもコロナ以降取引が禁止され一層入手が困難になっていて、メーカー各社は在庫を少しずつ放出する消耗戦に突入しています。今後一層価格高騰が続くものと考えられます。

紫毫筆

安徽の宣州の野兎の紫毫は古代から高級品で、長年野生の竹の葉を専ら食し、山の泉を飲んで育つ雄の兔の秋の毛で、その中でも首根っこからほんの少しだけとれる“双箭毛”が天下一品とされています。

ムジナ筆

ムジナはアナグマやタヌキなどを指す言葉で、アナグマが掘った同じ穴をタヌキなども使うことから同じ穴のムジナという、違うように見えて同じ仲間、裏でつながっている、ということわざがあります。中国から舶来する筆もムジナとよばれる筆でも細かく分けると“石貛(せっかん)”はカニクイマングース、“鼬貛”はイタチアナグマ、“狗貛”はアナグマ、“果子狸”はハクビシン、“狸”はタヌキなど多種に及びます。本物の石貛の毛は石貛針毛とよばれ腰が強力で毛先の鋒が長く鋭利でまとまりがよく、毛表面の含墨量が多くしかも均一に吐墨する性能があり多種の効果を生み出すことが可能です。さすが蟹を食っているマングース様です。一方、同じ毛のように見えるアナグマなどは、価格が安い反面、毛質が粗く、穂先の鋒がなくまとまりが弱く、石貛針毛のような効果は得られないそうですが、市場には石貛筆として流通するので注意が必要で、石貛と同じ穴のムジナとはいいかないようです。ムジナ系の筆で、日本で通称オロンピーとかパーミーとよばれる筆はどんな動物の毛とおもいきやイタチアナグマという、名前を聞いただけではイタチなのかアナグマなのかはっきりしない動物のようです。いづれの小動物の原毛も現在は入手が困難で価格が高騰しています。

兼毫筆

同一の動物毛から作る純毛筆に対して、同じ動物の毛の中から、柔らかい毛と硬い毛を混毛したり、違う動物の毛を混毛している筆を兼毫筆(兼毛筆)と呼びます。純毛だと柔らかすぎたり硬すぎたりする場合に筆の弾力や墨含みを調節するために筆作りの職人が混毛して作ります。各メーカーや職人によって用途別の無数のレシピがあり、自分に合った筆を探し当てるにはとにかく使ってみるしか方法はありません。

習字用筆

小学生の生徒さんや初心者の方から中級者の皆様にご使用いただける経済的な入門筆です。

書初め筆

小学生の生徒さんや初心者の方から中級者の皆様にご使用いただける経済的な書初め筆です。

玉毛面相筆

ネコの毛です。化粧筆にも使用されるそうで、玉毛は毛先が玉状になっていて、しなやかでコントロール性が高いといわれていますが、自分で顕微鏡で確かめたわけではないので本当にい玉状になっているかどうかはまだわかりません。

連筆・刷毛

主に画に使用する筆ですが、創作書に使用される方もいます。排筆は中国では主に表装用具として使用されますが書画筆として使用してみるのもおもしろいかもしれません。

絵手紙用筆

絵手紙の彩色に使用する筆です。柔らかい兼毫筆として書にも使用可能です。

珍毛筆

鳥、獣、植物等、あまり一般的でない原料で筆を作ってみました。どう使うかはお客様次第です。