宋、元代以前は金、銀、銅、犀角、象牙、竹根、木など比較的硬い材料の印材が主に使用されていましたが、元代に王冕が浙江産の花乳石に自ら篆刻し治印して以来、硬い材料に比べて容易に刻字できることから石印材の潮流が起き、石印材篆刻の芸術が興隆していきます。中国国内のいたるところで石印材に適する石材が採石され、昔から有名なのが浙江省青田石、浙江省昌化石、福建省寿山石、内蒙古巴林石などです。近年までは良質な石印材が安価に採石されていましたが、ここ数年間、特に2020年代に入ると環境保護や乱採石を管理する法律が一層厳しくなり、採石が極端に制限されたり、人件費の高騰で石印材の価格も暴騰しています。
青田石
浙江省青田県で産出される流紋岩質凝灰岩で、歴史は約1700年前まで遡り、浙江博物館に六朝時代の副葬品の豚の彫り物が所蔵されています。元代の超孟頫により青田石の灯光凍が作印に使用され始め、明代には既に高級印材としての地を築いていたようです。明代以降は南京等の大量消費地に運ばれ篆刻の材料として消費されるようになります。近年においては日本にも篆刻教材として大量に舶来されています。青田石には数多くの坑道があり、現在多く舶来している青田県山口鎮だけで封門石、旦洪石、尭土石、白垟石、老鼠坪石と坑道が数か所あり、更に少し離れたところに塘古石、周村石、山炮石、北山石、方山石、季山石、武池石などの多くの坑道があります。一概に青田石といっても多種多様で、緑色の石もあれば、紫色や赤色や茶色っぽいものなど、工場はその時その時に状態の良い材料をあちこちから仕入れるために、篆刻教材用の青田石を輸入しても毎回微妙に石質が変化します。坑道から運び出された石材の多くは建材用途に使用されるらしく、印材になる石はその中の一部分の石印材に適している鉱脈部分のみです。特に封門坑などではほんの少しだけ採れた凍石はオークションにかけられ凄まじい価格で取引されるようになってしまい、超富裕な愛好家以外には全く手出しができない宝石になってしまいました。当店では、篆刻教材用の青田石をA級青田青白章、透明感があり雑物がほとんど混入しないところを厳選したものを特級青田純白章として区別して販売しています。いずれも出荷前に全量検品して印面の亀裂や雑物があるものは極力避けていますが、自然石のため人によっては見方が異なりますので予めご了承をいただいた上でご利用いただければ光栄でございます。
蘭州白石
甘粛省から産出される白蝋石で、蝋を刻す如く簡単に篆刻でるので蝋石とも呼ばれます。印面の雑物や亀裂がほぼないので学校教材や初心者向けの教材、ご高齢の方の篆刻教材として重宝する反面、軟らかい石のため印面が変形しやすく本格的な篆刻には不向きです。最近では甘粛省の蝋石が産出されず、他地域の蝋石が同名で混入してきますが毎回名前を変えるのも大変なので一律に当初の蘭州白石として販売しますのでご了承願います。
朱砂紅凍石
教材用印材よりワンランク上の作品用印材として人気上昇中で、寿山芙蓉石に彫り味が近い石をインドから中国へ運び、青田石の工場で加工した後に日本へ輸入しています。
遼凍石
中国の東北部遼寧省から産出される石印材です。蒟蒻のような色彩の石で、ロットにより多少色が変わり、その色によって若干彫り味も変化します。独特の粘りがあり、人によっては好き嫌いがあると思います。原料産出が不安定で入荷が運任せの石材になりつつあり、在庫状況も不安定になっています。
新巴林石
巴林石はもともと内モンゴル自治区赤峰市巴林右旗から産出される石印材で、鉱物学的には葉蝋石とよばれる蝋石の一種で、なめらかな彫り味が特徴ですが、一般的に蝋石と呼ばれる石ほど軟らか過ぎず良質な石印材です。近年では大量に教材用として舶来していましたが、最近は資源が枯渇して価格が暴騰してしまい高額な一品もの印材でのみ見かけられるようになってしまいました。代替品として同成分の原石を新疆ウイグル自治区から青田石の工場に運び、印材に加工したものを新巴林石として輸入しています。ロットによって褐色、紫色、黒いものが混入します。
吉林長春石
吉林省と北朝鮮の国境付近の長白山で採石される石材です。内モンゴルの旧坑巴林石が枯渇して間もなくは代替品として舶来していました。在庫がなくなり次第廃盤になります。
肖山紅石
浙江省産の紅石です。青田石より若干硬めの石材です。
在庫がなくなり次第廃盤になります。
寿山石
福建省福州市の北部郊外の福州市普安区、連江県、羅源県の黄金の三角地帯に分布する鉱脈から採石される石印材です。中でも古くから採石される寿山鉱区では高山、旗山、月洋の三系、いわゆる田坑、水坑、山坑に分別され著名な石が採石されてきましたが、現在では他鉱区のものを合わせると百数十種類にも及び、希少価値があるものは集石癖家の間で金より高い価格で取引されています。ここでは多量に産出される教材用のものを掲載し、効果でマニアックな一品ものは一品ものコーナーに掲載します。
ラオス石
資源の枯渇と同時に2010年頃からの急激な経済バブルにより寿山石が暴騰し始めた頃、寿山高山石として市場に少々違和感がある石材が出始めました。刀感が高山石や善伯洞石によく似ていて、当初は寿山石と偽って販売する輩がたくさんいましたが、2014年頃から大量に市場に出回り始めるとラオスの石として周知されるようになりました。中国国営の4大財団の一つ保利集団が投資し、ラオス鉱山の権益を一手に握り、中国の原料市場で輸入した原料を競売し青田や寿山の業者に供給し価格をコントロールしているため割安感がないのが少々残念です。
一品もの、その他印材
高級印材や訳の分からないものを掲載します。掘り出し物が見つかるかもしれません。
特価処分印材
訳あり特価品
ネット販売専用・卸し不可です。
出荷前に検品して、色が悪いとか、印面にキズがあったり硬い鉱物があったり、何らかの理由で正規に出荷すると叱られそうな不良品です。側面は使える場合が多いので、側款の練習に最適です。印面もうまく使えば十分使えますが、一応不良品なのでゴミだと思ってノークレームでお買い求めお願いします。